日本の民事司法制度の一つに、「支払督促」というものがあります。これは、債権者の申し立てに基づいて、裁判所から債務者に金銭の支払いをするように督促することです。例を交えて説明すると、債権者のAさんは債務者のBさんに100万円を貸していたとします。AさんはBさんに、この期限までに貸した100万円を返して下さい、と約束しましたが、Bさんはそれに応じませんでした。この時に、AさんがBさんに対して「支払督促」の申し立てを行うと、裁判所からBさんのもとに支払督促が送られ、Bさんに100万円の支払いを命じます。この時、Bさんが2週間以内に「異議申し立て」をしなければ、裁判所はBさんに対して「仮執行宣言付支払督促」を送り、強制執行に移行します。しかし、Bさんが異議を申し立てると、そのまま「訴訟」に移行します。訴訟には、通常の形態で行う通常訴訟の他、60万円以下の金銭の支払いの際に利用出来る「少額訴訟」などがあります。今回の例では、少額訴訟を行うことは出来ないため、通常の訴訟が行われることになりますが、訴訟には多額の費用がかかる上、訴訟に見合った成果が得られるとも限りません。また、今回の例でBさんは「1ヶ月10万円ずつ返済していく」と申し立てたため、Aさんは支払の督促をやめることにしました。これを「支払督促の取り下げ」といいます。取り下げが行われると、今後裁判所での手続きは進んでいかないこととなり、取り下げ後AさんはBさんと直接交渉した上で、問題の解決を目指していくことになります。